残り半分

話がまとまる前にやめとく派です

映画Blue Giant

石塚真一さんのジャズ漫画、ブルー・ジャイアントのアニメ映画を観てきました。

 

コロナ以来、ほとんどでっかい音でジャズを聴けてなかったので、第一にでかい音でジャズを聴くのを目的に観に行って、その目的はバッチリ果たせました。やっぱしジャズは最高だべ。

 

今回の映画は、漫画では脇役にあたる、ピアニスト雪祈の物語とも言えるもので、映画ではピアノ演奏の出来が他のパートに比べて抜きん出てます。それも当たり前と言いますか、実際のピアノ演奏はピアニストの上原ひろみさんが担当しています。下の映像は映画の中のライブシーンですが、ピアノはサックスソロの伴奏にもかかわらず凄まじい音階の動きを見せてくれてます。映画の音響でこれを聴けるだけでも、ジャズがお好きな方であれば絶対行った方が良いと思います。

 

番外編として、いくつか気づいたことがありました。

①劇中のヘタクソな演奏がじつは高度テク

映画の中で、ドラムの玉田はバンド編成時完全な素人で、初ライブでは散々な演奏内容、というシーンがあります。実際叩いてるのは石若駿というプロの方。プロが弾く下手くそな演奏が面白くて、しっかり正確に遅れたリズムになっていました。

普通の素人は、一瞬リズムが合うけどどーしても追いつかない、あるいは追い越してしまう、を不規則に繰り返して安定しないのが下手くそに聞こえるのですが、映画ではプロが下手くそぽく弾いてるので、きっちり正確にリズムが遅れてました。これはこれで凄いテクニックだと感心しながら聴いてしまった。

 

②ライブ演奏の音がデッド気味

これは次回以降のお願いみたいなものなんですけど、ライブのリアリティがもう少し欲しかったです。

プロといえども人間なので、ライブでは演奏に揺らぎがあってしかるべきで、その揺らぎにこそ、演奏の勢いや熱さを感じられ、ライブの楽しみがあるのであって、パットメセニーのようなライブなのかスタジオなのか見分けのつかない超絶なひとは本当にマレなわけです。音がいかにも、スタジオ音源だなあという感じでした。映画冒頭シーンで、ジャズバーでソニースティットのレコードがかかった時、ステレオシステム独特の低音の響きや音のきしみを再現していたので、これはライブシーンはきっと凄いぞ、とリアリティを期待したのですが、少し物足りなかったです。

ライブのリアリティについてはきっと色々考えられていて、たとえば演奏直前に深く息を吸うサックスのブレスが入ってたのはすごくリアルで良いなあとおもったんですけど、さらに踏み込んで、サックスソロから始まる時は、指を押さえるキィのカチャカチャ鳴る機械音まで聴こえると最高でした。あと演奏が無音になった時などは観客が囁き合う声や、グラスや食器の音も入れて欲しかった。あんたビルエヴァンスのワルツフォーデビィ好きすぎだろ、と言われそうですが。

 

なんにせよ、青春ジャズ映画としてはとても面白く、お恥ずかしながら2時間のうち半分くらいはうんうん、って涙ぐみながら観てたので、気になる方は是非一度観てみてソンはないと思います。