残り半分

話がまとまる前にやめとく派です

甘酸っぱい

肯定的な意味で雇用の流動性という言葉が使われ始めたのはいつからだったか、それほど昔ではない気がしていますが、この10年くらいで、会社を去る人が増えてきたという実感はあり、その分入ってきていただければ、なるほどな「雇用流動性」ってこういうことなんだなって腑に落ちることができて良いんですけど、どうもそういうわけでもなくて、どちらかというと減っているというのが現実です。困っちゃうね。

例えば部下が辞めたいと言い始めたときに、当然大切な仲間ですし、わたしはいったん慰留はするのですが、本音の部分としては話してる雰囲気で「ああこれは仕方ないかな」というときと「いやちょっと考え直させたいな」というときが有ります。その違いは何かというとシンプルに「前向きか、後ろ向きか」ということです。前向きっていうのはつまり、やりたいことが明確にある、もしくはもう一度探したいという意思が見える時です。これはもう仕方ない。次の場所での活躍を応援するのみです。反対に後ろ向きっていうのはつまり、とにかく嫌になっちゃった、というときです。ただ、とにかく嫌だ、というときに気をつけたいのは心の病の可能性についてで、これは絶対に気をつけなければならない。産業医に繋ぐことを念頭に慎重に話し会います。それでまあ、明らかにただ「いやになっちゃった」というときですね、簡単に「そうかわかった」とも言いづらいですし、わたしとしてはちょっと食い下がるんですね。もう少し考えてみようと。現状が不満であれば環境を変えることもできるよ。しかし相手は嫌気が指してますから、にべもないわけです。わたしが知り得ない頃の取り戻せない昔のことを掘り返して、終わりの始まりの話を聞かされる。そういう話を聞きながら、不謹慎ながらわたしは「ああ、これって彼女に振られた時みたいだな」なんてふと思って、ちょっと新鮮な気持ちがする。なんだか甘酸っぱいではないか。そうしてなんとか慰留しようって気力が溢れてきちゃったらちょっとマゾっけのある人ですが、現実的には、とりあえずもう少し時間を設けるので考えてみよう、というお話をしてその場を取り繕う感じです。

ハーゲン弦楽四重奏団によるラヴェル弦楽四重奏曲ヘ長調です。室内楽団って、ディレクターがいないのにどうやって客観的に演奏を把握しているのか不思議です。