残り半分

話がまとまる前にやめとく派です

突破力にも色々あった

コロナ対策分科会会長の尾身さんについては、2月の騒動の始まりから現在に至るまで、常に第一線で役割を務めていて、わたしから見るとそれだけでも化け物のようなメンタリティをお持ちの方だなと尊敬というより畏怖の念を禁じ得ないのですけど、理論疫学者西浦さんの記事を読んでその人間力にさらに驚いてしまいました。少し長いですが引用します。

 

僕があくまで「8割の接触削減」を主張している時に、最終的に「最低7割、極力8割」になったのは、「7割」になりかけていたのを尾身先生が押し返してくれた成果です。この件で、僕に電話をかけてくださった時、「あくまで8割でお願いします」と僕が言ったら、「おう、わかった」と、その後の会議で総理に説明してれました。

これは同席した人から聞いたんですけど、「ここは、7割か8割という話ですけど、医学者として見るなら、僕は8割を取るなあ」とかゆっくり言いながら、中身の文章を変えていくんです。


「最低7割ということでしょうね」って言ったかと思えば、すぐに「極力8割でしょうね」と言い、それから「そういうことだったら最低7割のほうはもう要らないかもしれないぐらいですね」とか言いながら、日本語が変わっていく。その後また押し返されて「最低7割、極力8割」となるわけですけど、一時は「極力8割」だけのスローガンになりかけるところまで(笑)。ものすごく困った流れになっていた時にも、尾身先生が大臣に会って政策が変わって、気付いたら解決していたというようなことが何度もあって、僕にしてみると理想のボスですね。とにかく突破力がすごいのです。

(『理論疫学者・西浦博の挑戦 新型コロナからいのちを守れ!』第3章緊急事態と科学コミュニケーションより)

 

突破力、というとなんとなく、時流の勢いに乗って一気に突き抜ける「剛」なイメージを持っていたのですが、尾身さんの突破力というのは「柔」なのだなあと理解しました。議論の際の言い回しとしてはのらりくらりだけど、相手に譲ってるようで実質ほとんど譲歩しないスタイル、根底には確固たる意志があって、少しずつ言い回しを変えて自分の方に意見をグッと引き寄せることができる豊富な語彙力。すごい。

正面突破と撃沈を繰り返してストレスがどんどん自己増殖していくわたしのスタイルとは正反対で、そうか、そういう突破力というのもあるんだな、と感心してしまいました。見習いたいけど、できる自信はないです。