金曜夜 会合とライブ
昔から、業界の懇親会というか立食パーティみたいなのがあって、自分の顔を売ることに長けてないわたしは、あまりこういう場は得意ではありません。とはいえ伊達に何十年もリーマンやってないわけで、当たり障りなくご時世な話題や業界の情勢を並べ立て少し自虐的な話題を振りつつ、ではまた今度よろしくー、でやり過ごすすべは身につけているので、仕事と思えばなんとなくこなせます。ただこれはとても疲れますね。日中の仕事のときは、職場にいたり顧客の会社にいたり現場にいたり、環境ができあがっていて、気持ちを仕事モードにスイッチしやすいんですけど、この、利害関係はあるっちゃあるがライバルでもありという関係性の皆さんを相手にして仕事として飲み食いする、それに関してはまったくスイッチの入れ方がわからないので、どのテンションで挑むべきかよくわからない、というのが正直なところです。その点弊社営業マンたちはとても上手い。けっこう飲んでいるけど、ずいぶん楽しそうに話してるけど目は笑わずつねに周囲を見てなにかを探っている。完全に仕事モードでこなしてるわけです。大したものだなあと思います。
ただこの何年かはその催しも、例の、口にするのもイヤになる感染症のおかげで開催されることがなかったのですけど、さすがにこの1年くらいで元通り開催されるようになりました。
とある夜、そういう業界の会合を都内でこなしたあと、うっへえ疲れたなあとトボトボ駅に向かって歩いていたら、ジャズバーの看板が目に入りました。本日2ステージ目ライブがあと5分で始まる、と入り口に書かれています。スマホで早速調べるとミュージックチャージは3500円。アーティストは田中菜緒子さんのトリオ。プロの演奏じゃん。でも残りワンステージのみかあ、どうしようかな。
入り口でウダウダしていると、夫婦でわたしの後ろを通り過ぎようとしていたご主人が話しかけてくれました。
ここ、良いですよねえ。ライブ見に行かれるんですか?音も良いですよ。
そして奥さんが微笑みながら、楽しんでくださいねえ。と言って去っていった。
よし、行こう。背中を押されるように中に入りました。
地下への階段はストイックな雰囲気で洒落てます。余計緊張する。
ほとんど満席でしたが、案内されたのはピアノに手が届くほどの場所。
とても良かったです。
スタンダードなフォービートからはじまり、ロバートグラスパーのようなニューヨークなジャズだったり、アグレッシブでハイスーピードなモダンジャズも聴かせてくれて、来てよかったなあって心から思いました。田中さんのMCが印象的で、表現の場を極端に制限された時代を超えて、ライブを開催する喜びや、トリオが初対面でも音楽が成立する即興音楽=ジャズの素晴らしさを、なんどもなんども話されていたこと。そしてその思いは演奏を通して十二分に伝わりました。私自身もこうやって数十人規模の会場で音楽を聴くのは緊急事態宣言以来であることにいまさら気づきながら聴き入りました。
ウッドベースの倍音を含んだアクセントの強い生音や、ドラムがブラシで手数多くなっていったときのトリオのテンションの上がり方、ソロ回しのメンバー間の目配せの小粋さ、そしてなによりリーダー田中さんの演奏時の佇まいが素晴らしく、目を閉じて眉間に少しシワを寄せながら指先に降りてくるフレーズを奏でる、そこでつまびかれるキラキラ輝く音が彼女の耳にフィードバックされてさらなるフレーズを探し当てたときに歓喜する笑顔と気持ちが、その場にいるみんなにダイレクトに伝わる幸福感、そして音楽に対する真摯さや純粋さが伝わってきて、少し泣けるほどに感動しました。興奮しすぎて書いてること日本語をはみ出てますがご容赦を。
以来ファンになってしまいました。彼女の最新作APPRECIATIONは多様な音楽性でとても楽しめるアルバムです。そのなかからMTと言う曲のライブ映像を紹介します。アツすぎます。
土曜 開山前の谷川岳
昨夜のライブの感動・興奮がさめず、やや寝不足気味で谷川岳へ。谷川岳は3月上旬に積雪期を登って以来です。雪解けで高山植物たちが花をつけ始めていました。
天神平からの谷川岳。2つのピークを持つのが特徴です。
イワカガミが元気にたくさん咲いてました。
小ぶりでかわいいアカモノ
傾斜はそれほどではありませんが途中から両手両足を使って岩登りします
途中見えてくる、マナイタグラとよばれる山は雪の季節のみ登れる山で、春夏秋は薮に覆われて歩けません。
一部雪渓を渡ります
雪渓は傾斜がキツイのでアイゼンなど滑り止め必須
山頂付近にハクサンイチゲが生き生き咲いてました。今日の目当てはこのお花。
谷川岳山頂と積雲
引いて見るとこんな感じの山頂
山頂付近に建つ、肩の小屋
下山して谷川岳ロープウェイで麓まで降ります。空が夏の様相です。