残り半分

話がまとまる前にやめとく派です

映画「記憶屋 あなたを忘れない」

亜人」に続いて鑑賞したのは「記憶屋 あなたを忘れない」です。2020年1月公開作品。

原作はホラー小説ですがこちらは未読です。映画のタイトルだけ見てジーンと来れるかなあと思って観ました。

人の記憶を消し去ることができる都市伝説的存在「記憶屋」の話。

芳根京子さんの演技が素晴らしいと思った。純粋で天真爛漫な雰囲気と、普通に人が持つずるいところや嫉妬心も併せ持つところが大変良かったです。

鑑賞しながら、ある人から特定の人の記憶を消し去るのは大変難しいことなんじゃないかと思いました。人の記憶というのは他人との関わり、相関関係で成り立つものであって、決して単純ではないし、自己完結しないからです。自己完結していると思われる脳の記憶方法についても、パソコンのハードディスクのように特定の記憶が磁気データとして特定の場所に保存されているとは考えにくく、脳全体の信号の関連付けで成り立っているように思われます。だから記憶を操作するというのは、脳の神経細胞のつながり一つ一つを丹念にひも解き、そこからある特定の人の記憶のみを脳内ネットワークから取り除き、さらに消し去りたい人の関係者を抽出し、抽出された人々すべての人の記憶からある消し去りたい人の記憶を消去し、さらに厄介なことに人は自然に忘れることができるので、忘れてしまって実は昔関連していた人をどうやって記憶屋が見つけ出すのかとか、これもやっぱりタイムリープや不死身な設定と同様、いろんな矛盾が発生します。

それで、わたしが小説や映画をほとんど見なくなったのはこういうところにあって、物語にはどうしても矛盾があるもので、だからといってすべてが整合した物語というのは多分ものすごく退屈で、さらに現実世界であってもすべて辻褄が合っている出来事というのは実在しなかったりします。ある物事に対して、なぜ、なぜ、と問いかけ始めると大抵の物事は三つくらいで「いや、わからんけど」という壁にぶつかるものだったりします。そこからさらにつき詰めるだけの時間は無駄なので、ある程度の矛盾は目をつぶって物事は進んでいくのです。だから物語に矛盾を見つけたからと言ってその物語はダメな物語なのかと言ったら全くそんなことはなくて、どこまで許せるか、目をつぶれるかというとき、圧倒的な何かが感じられたら矛盾に目をつぶって楽しむことができるわけで、それはわたしにとって「TENET」だったり「シンゴジラ」だったりしたわけですが、この映画はそう言ったことを久々に考えさせてくれました。

 

記憶屋 あなたを忘れない

記憶屋 あなたを忘れない

  • 発売日: 2020/10/14
  • メディア: Prime Video