残り半分

話がまとまる前にやめとく派です

ヘリウムボイスが悔やまれる

休みが三日もあると、怠惰に過ごすことを全面的に許された気になって、ついつい時をむさぼってしまいます。今日はまさにそんな気持ちで、猛暑を嫌ったこともありますが、夕方までほとんど部屋で寝て過ごしました。朝テレビを点けたらたまたまバッハのゴルドベルク変奏曲のアリアが流れていたので、グレン・グールドの演奏する1955年と1981年のゴルドベルク変奏曲をリピートで流しながら、コンコンと眠り続けた。昼にふと起きて乾麺でざる蕎麦を食べて、また寝た。そういうふうに緩んだ心は即座に身体にも影響を及ぼして、血圧がいつもの85%くらいにまで下がっていて、自分の身体の素直さに感心しました。

空に赤みがかかったころ、ようやく外をうろうろする気になって、販促商法に見事に乗りやすいタイプのわたしは普段買わない雑誌、文藝春秋9月号を芥川賞受賞作品全文掲載の文句につられてコンビニで買ってしまった。そしてわたし的にはよくあるパターンで、受賞作は結局読まずに、官房長官や芸能人のインタビューを読んだりした後に、サイエンスライターさんのコラムが目に入って読んだ。ヘリウムガスの枯渇が心配されていると言います。

“ヘリウムは他の資源と異なり、他の物質で代替し得ない性質を多く持つ上、新たに作り出すこともできない。空気中に一度放出されたヘリウムは、宇宙空間へと逃げていくのみだ。“

文藝春秋9月号佐藤健太郎「数字の科学」49ヘリウムの沸点 より

子供の頃にヘリウムガスを吸って声が変わってゲラゲラ笑っていたあの行為が悔やまれます。そんなに貴重なものだったとは。あれはあれで幸福な時間だった、と自分に納得させるしかありません。ちょっと調べてみると、確かに貴重な資源で、他の物質から生成ができなくて、天然ガス田に含まれる微量なヘリウム成分を分離精製しているようです。

その沸点はマイナス269度で、原子が振動を止めるいわゆる絶対零度がマイナス273度なので、ほとんどの人為的環境で安定した状態を維持するわけで、大切な物質です。身近なところではMRIの冷却装置や、シリコンや光ファイバーの製造工程でも利用されています。

話は飛びますが、太陽があのエネルギーを保つには、太陽の成分であるヘリウム3を利用して核融合反応を繰り返しています。また、月には大量のヘリウム3が存在しています。月に存在するヘリウム3は、太陽から飛んできて月表面に吸着・堆積したものです。地球にヘリウム3が存在しないのは地球が大気で覆われているからです。漫画「ムーンライトマイル」では、宇宙開発が盛んな近未来において、中国とアメリカの月所有権の攻防が描かれていて、争いの目的の一端は月に大量に存在する資源ヘリウム3にもありました。ヘリウム3の用途は、月面に核融合反応炉を作り、生成エネルギーを電磁波に変換して地球に転送する、というもので、当時読みながらその発想に大興奮したものですが、「ムーンライトマイル」はまだ続いている漫画ではあるものの、連載が中断されて早10年以上経ちます。その間作者はガンダム外伝漫画を連載していて、それはそれで良いのですが、できれば連載再開に向けて頑張ってもらえないかなあと思うのです。

 

MOONLIGHT MILE(1) (ビッグコミックス)

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趣味全開のお話でした。